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社会政策学会の学会誌『社会政策』に、家族福祉論の批判的検討を行った投稿論文が掲載されましたのでご案内させていただきます。投稿したのが昨年1月末でしたので、都合掲載まで16ヶ月かかった計算になります。査読者のお二人を初め、編集委員の先生方にも、大変お世話になりました。この場を借りてお礼を申し述べさせていただきます。

それでも、実物を手に取ってみると、ああここはこう説明すれば良かったとか、ああこの言い方は誤解を生むかも知れないとか、こういうのキリがないものですね。また、論文を書き上げたあとに、読んでおくべき論文や著書を発見することもあり、まだまだ不十分な点の多い議論だとは思いますが、今後の課題とさせていただきたく思います。


<題目>

家族福祉論の解体――家族/個人の政策単位論争を超えて

久保田裕之
大阪大学大学院人間科学研究科 助教


<目次>
1.はじめに:多様な家族をめぐる家族福祉論の困難
2.家族か個人か:「政策単位の個人化」を超えて
3.ニーズ論と家族福祉
4.家族的ニーズの分節化へ:<依存批判>を手がかりに
5.おわりに:家族福祉の解体と再編

<PDF>
久保田裕之,2011,「家族福祉論の解体――家族/個人の政策単位論争を超えて」『社会政策』3(1):113-123.

ミネルヴァ書房さんとの契約で、2年間は転載不可と聞いています。
ウェブへのアップについては未確認ですが、出版社さんや学会編集部に認した上で、
可能な限り早く公開したいと思います。

→2013年9月に公開しました


<関連文献>
  

博士論文の終章の一部を元に執筆した論文を、大阪大学人間科学研究科の紀要に掲載していただきました。
程なく紀要アーカイブを等を通じて公開されると思いますが、先に、久保田の執筆箇所のみPDFを上げておきます。

博士論文は昨年度の5月に提出し、9月に学位を頂いたのですが、心残りは、ケアや親密性に関する新しい議論、特に金井淑子先生の議論をもう少し取り込みたかったこと、それから、家族のアイデンティティに関わる側面を承認論を援用してもう一章を追加したかったことでしょうか。この点は今後の課題として、学会報告などで議論させて頂く機会があるかと思います。

なんとか今年度中には博論を書き直して、単著として出版したいものです。


<題目>

家族社会学における家族機能論の再定位――<親密圏>・<ケア圏>・<生活圏>の構想

久保田裕之
公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構(当時)


<目次>
1.はじめに:「家族の多様化」論の隘路から
2.家族機能の二重の分化:家族にいま何が起こっているのか
3.家族研究における家族機能の形式化の試み
4.<親密圏>・<ケア圏>・<生活圏>の分析的図式化
5.おわりに:家族社会学における新たな理論枠組みの構築に向けて

<PDF>
久保田裕之,2011,「家族社会学における家族機能論の再定位」『大阪大学人間科学研究科紀要』37:77-96.

正誤表.pdf(2011.6.26Update)


   

京都大学の社会学研究会の同人誌『ソシオロジ』に、投稿論文が掲載されました。2007年に札幌学院大学で開催された、家族社会学会大会での報告原稿の後半を元に執筆しています。


家族定義の可能性と妥当性―非家族研究の系譜を手がかりに

久保田裕之
公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構


<URL>

久保田裕之,2010,「家族定義の可能性と妥当性―非家族研究の系譜を手がかりに」『ソシオロジ』55(1):3-19

昨年の11月に京都大学で開催された、京都大学のGCOEプロジェクト「親密圏と公共圏の再編成をめざすアジア拠点」で年に一回開催されている若手国際ワークショップに参加したのですが、そのときの報告原稿が冊子になっていますので、久保田の執筆箇所のみ公開します。


京都大学GCOEト「親密圏と公共圏の再編成をめざすアジア拠点」
http://www.gcoe-intimacy.jp/


【題目】
 Unweaving Family Welfare: Diverse Families as "Needs Mixes"

KUBOTA, Hiroyuki
Ph.D. candidate at Graduate School of Osaka University

【PDF】
Kubota, Hiroyuki., 2010, 'Unweaving Family Welfare: Diverse Families as "Needs Mixes"', Asato, W., and Kusaka, W., (eds), Proceedings of the 2nd Next-Generation Global Workshop 'Is "Family" Alive?: Changing Social Communication through Sex, Politics and Communication", Kyoto University Global COE Program: pp104-115.


この年のテーマは「『家族』は今も健在なのか?(Is "Family" Alive ?)」という興味深いものでしたので、喜び勇んで参加させていただき、「家族と福祉」の分科会で報告させて頂きました。いろいろな国からいろいろなテーマに関心を持つ若手研究者が集まって、報告を聞いたり議論をしたりするのは楽しいですね。逆に、焦点を絞って議論を深めることができないといえばその通りで、この点を持って国際学会なんて意味がないということをおっしゃる方も少なからずいますが、役割分担というか、違う筋肉の使い方として重要なのではないかとも思います。拠点リーダーの落合恵美子先生、ならびに教員、院生、スタッフのみなさま、ご挨拶が遅くなりましたが、大変お世話になりました。

ちなみに、報告タイトルの「Unweaving Family Welfare(家族福祉の解体)」は、僕の敬愛するイギリスの動物行動学者リチャード・ドーキンスが『Selfish Gene(利己的な遺伝子)』で一躍有名になったあと、1998年に出版した『Unweaving the Rainbow(虹の解体)』からとっています。ドーキンスのタイトルはさらに、イギリスのロマン主義詩人ジョン・キーツの一節に負っています。キーツはニュートンの科学によって、あの美しい「虹」は分光学的な現象に還元され、その詩的な力を破壊されてしまったと考えました。ドーキンスは逆に、科学的な眼差しこそが宇宙に対する「センス・オブ・ワンダー」(レイチェル・カーソン)を喚起するものだと反論しています。これは、家族や福祉という「善きもの」を分析的に議論する場合にも当てはまるのではないでしょうか。(今思えば、『生物と無生物のあいだ』講談社現代新書の福岡伸一さんが訳されていたんですね?)

なお、この報告を元にした論文(日本語)が、2011年の6月ごろに刊行予定ですので、興味のある方はそちらも併せて呼んで頂けたらと思います。

今思えば、この翻訳は京大助手だったころの福岡伸一が手がけていたんですねー。
「センス・オブ・ワンダー」を手軽に味わえる『空想科学読本』シリーズもあわせてどうぞ。


  

『家族社会学研究』から依頼を受け、マーサ・A・ファインマン著、穐田信子・速水葉子訳『ケアの絆――自律神話を超えて』(2009年、岩波書店)の文献紹介を担当させて頂きました。

この本は、同著者の前著『家族、積み過ぎた方舟』(2003年、学陽書房)と同様、個人的に非常に思い出深い本で、既に原書を読ませて頂いていたのですが、訳書の紹介を担当させて頂いたことに感謝です。編集委員会の担当者さま、どうもありがとうございました。注文しようと思っていた矢先に邦訳を頂いたことにも感謝です(書評や文献紹介を書くと本がもらえるらしい)。


久保田が書いた文献紹介は1頁だけですが、興味がある方は以下からダウンロードしてください。


<電子ジャーナル>
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjoffamilysociology/21/2/21_249/_article/-char/ja/


<PDF>
久保田裕之,2009,「文献紹介:『ケアの絆――自律神話を超えて』」『家族社会学研究』21(2):249.

日本家族社会学会の機関誌『家族社会学研究』に、投稿論文が掲載されました。2007年に札幌学院大学で開催された家族社会学会大会での分科会報告原稿の、前半部分を元に執筆したものです。


「家族の多様化」論再考--家族概念の分節化を通じて

久保田 裕之
大阪大学大学院人間科学研究科


<要約>

「家族の多様化」論の前提となる,家族に関する選択可能性の増大という認識は,家族が依然として選択不可能な部分において個人の生存・生活を保障している点からみれば一面的である。法・制度に規定された家族規範は,現代においても,婚姻をモデルとした性的親密性・血縁者のケア・居住における生活の共同というニーズの束として複合的に定義されており,個人の主観的な家族定義もまた,この家族概念をレトリカルに参照せざるを得ない。さらに,貧弱な家族外福祉を背景として,主観的家族定義における親密性の重点化により,親密性と生存・生活の乖離が生じることが現代の「家族の危機」の一因となっている。そこで,政策単位としても分析単位としても複合的な家族概念を分節化し,従来の家族の枠組みを超えて議論していくことが重要である。家族概念を分節化することで,家族概念の単なる拡張を超えて,家族研究の対象と意義を拡大することができる。


<電子ジャーナル>

http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjoffamilysociology/21/1/21_78/_article/-char/ja/


<PDF>

久保田裕之,2009,「『家族の多様化』論再考―家族概念の分節化を通じて」『家族社会学研究』21(1):78-90.


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