エヴァ・キテイの訳書『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』が発売されました

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ケアと正義を考えるための最重要文献のひとつ、Eva Feder Kittay著「Love's Labor」(1999)の日本語訳が白澤社さまより発売になりました。岡野八代・牟田和恵監訳で、邦題は、『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』です。久保田も、第2部と第3章のロールズ批判の前半の訳を手伝わせていただきました。

キテイはアメリカの政治哲学者であり、本書も第II部を中心に哲学的な議論を含んでいますが、岡野・牟田両氏のご尽力により、たいへん読みやすい訳になっていると思います。特に、6章「私のやり方じゃなくて、あなたのやり方でやればいい。セーシャ。ゆっくりとね。」のように、エッセイ調で構成された章もあり、重度の知的障碍を持った娘さんとの関係の中で鍛えられたキテイの哲学の源泉を垣間見ることができます。研究者のみならず、日々ケアの現場で依存にかかわる労働を実践されている方々にも、手にとって頂ければ。

ちょっと高いですけど、翻訳書はどうしても値段が下げられないみたいで。



<本の紹介>
子育て、障碍者・病人・高齢者の介護など、主に女性たちが担ってきたケア労働。そのため女性は、社会的に不利な立場におかれがちだった。重い知的障碍を持つ娘との生活を送ってきたキテイが、ロールズ「正義論」を大胆に批判しつつ、女性たちの経験を包摂する真の男女平等はいかに実現されるかを問い、公正でケアの行きとどく社会への道しるべを提示する。

<著者紹介>
ニューヨーク州立大学ストーニー・ブルック校哲学科教授。女性学研究科教授、医学・共感ケア・生命倫理センター長を兼任。専門は、西洋哲学、フェミニスト倫理学、社会思想。

<目次>
第I部 愛の労働―依存は何を要請しているのか
 第1章 依存と平等の関係
 第2章 脆弱性と依存関係の道徳
第II部 政治的リベラリズムと人間の依存
 第3章 平等の前提
 第4章 社会的協働の恩恵と負担
第III部 みな誰か母親のこどもである
 第5章 政策とケアの公的倫理
 第6章 「私のやり方じゃなくて、あなたのやり方でやればいい。セーシャ。ゆっくりとね
      ―個人的な語り
 第7章 違いのある子どもへの母的思考

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